be動詞+過去分詞と言へばまず浮かぶのは受動態。
でもフランス語では、そうとも限らないようです。
Sur le banc un homme est assis.
(そのベンチの上に、1人の男が座られています???)
例文は、口が覚えるフランス語より
そんなわけで、本日はêtre+過去分詞を整理しようと思いましたよ。
être+過去分詞の用法1.過去分詞の形容詞的用法
NHK出版 これならわかるフランス語文法
分詞 より
過去分詞には、形容詞(句)と同じように、付加詞・属詞・同格という3つの使い方があります
属詞とは?
引き続き これならわかるフランス語文法
形容詞句の役割
êtreなどいわゆる繁合動詞と結び付いて、主語の性質を表します。この場合の形容詞句は属詞と呼ばれます
つまりは、
君は美しい
パンは美味しい
藤村はバカだ
のように、英語で言ったらSVC、「主語がどんなだ?」を説明している形容詞は、属詞と考えてよいということですね。
être+過去分詞の用法2.受動態
NHK出版 これならわかるフランス語文法
受動態の概要 より
受動態 = être + 過去分詞
文構造としては、形容詞的用法と同じなんですよね。
受動態の目安としては、意味上の動作主が「●●によって」を意味する「par」とか「de」の後に続くこともありますが、以下の解説にあるように、どうやら必ずしもあてになるとは限らないようでして。
受動態の文は動作主を省略したもののほうがはるかによく用いられます
parやdeで動作主が明示されていれば「受動態だ!」と判断しやすいですが、動作主は省略されることの方が多いって―。
つまり、これは例のあれです。
「文脈で判断しろ」と言っていますね(遠い目
être+過去分詞の用法3.複合過去
NHK出版 これならわかるフランス語文法
助動詞 より
複合形は<助動詞+動詞の過去分詞>という組み合わせで、一般的には「…してしまっている」という完了の意味を表します
さらに、
avoirかêtreか より
主語の移動や状態変化を表す動詞には複合形の助動詞としてêtreを用います
つまり、「行く」とか「来る」とか「入る」とか「留まる」とか「死ぬ」とか、移動や状態の変化を表す複合過去は、これまた「être+過去分詞」の構文になるということです。
ちなみに、代名動詞になると移動や状態変化に当てはまらなくとも全て「être+過去分詞」になります。
が、êtreの前にm'とかs'とか再帰代名詞がくっついてるので、判断に困ることはないと思います。
以上を踏まえまして
本日の例文を見てみましょう。
Sur le banc un homme est assis.
冒頭で「2」の受動態は意味的におかしいということは判明していますので、考えられるのは「1」の形容詞的用法か、「3」の複合過去です。
用法1.そのベンチに1人の男が座った状態でいる
用法3.そのベンチに1人の男が座らせていた
asseoirという動詞を調べてみれば、
https://kotobank.jp/frjaword/asseoir
フランス語に「座る」という自動詞はないという衝撃。
「座る」と表現したい場合、「私は私を座らせる」という再帰動詞で表現する必要があるわけですね。
そんなわけでasseoirは「座らせる」という他動詞なので、座らせる対象が必要になります。
しかしながらこの例文にはその「座らせた対象」の記述がありません。
正しい文として成立していないため、「3」の複合過去も除外されます。
ゆ え に、本日の例文。の訳。
Sur le banc un homme est assis.
(そのベンチの上に、1人の男が座った状態でいます)
ウェイヨー!!
と、いうわけで。
実際のところ、僕のブログを読んでくださっているダイナマイト・完全・フランス語エリートのみなさんであれば、何となく「ベンチに男が座っとる」という意味は読み取れるかと思います。
しかしながら、être+過去分詞の3パターンを押さえておけば、1つのパターンを当てはめても意味が通じない場面に遭遇しても、「2じゃ意味が通じないから1,3を当てはめてみよう」といった具合に、よりスムーズに正解にたどり着けることでしょう。
外国語学習において全体像を把握しておくメリットの多大さを頭の片隅に押さえつつ以上、être+過去分詞は受動態だけじゃないよ!でした。
本日の参考図書